取扱い分野

離婚一般

離婚事件では、相手方との交渉窓口となるほか、協議で離婚できない場合に離婚調停の代理人となって、調停に出席したり、離婚訴訟の代理人として、訴訟を受任することができます。離婚事件のほかに、面会交流、養育費、親権・監護権や子の引渡しに関する紛争、婚姻費用分担請求、不貞相手に対する慰謝料請求などについて相談、受任をすることができます。
Q 夫とは夫婦喧嘩が絶えないため、冷却期間を置くため、別居することにしました。今後、離婚に進む可能性もありますが、別居する前にどのようなことを準備しておけばよいでしょうか。

A 別居後の生活設計は検討しておいたほうがよいと思います。特に経済面は重要です。離婚を前提に別居する場合であっても、相手方に対し、別居中の生活費(婚姻費用)を請求できる可能性があります(民法760条)。婚姻費用の内容については、まずは話し合いによって取り決めることになりますが、当事者間の話し合いによって支払いを受けられない場合、実務では、婚姻費用分担を請求した時(一般的には婚姻費用分担請求の調停や審判の申立時)から支払ってもらえるとされていますので、早めに婚姻費用分担請求の調停を申し立てることなどを検討してください。
別居前に、財産関係の資料や離婚原因となりうる証拠も調査・収集しておくとよいと思います。
さらに、お子さんがいるときには、転校や転園などを伴う場合もあり、お子さんへの説明をどうするか、また、別居中の監護や面会が問題になる場合もあります。
詳しくはご相談ください。

Q 私は相手方と性格が合わず、これまで我慢してきましたが、子どもが社会人となったので、離婚をしたいと思っています。しかし、相手方は離婚には応じないと言っています。私は離婚をすることはできますか。

A 一般的に、性格の不一致だけで離婚原因が認められるかというと、難しいと思いますが、様々な事情(双方の意思や言動、別居期間、性的関係の有無、信頼関係の破壊の程度、未成熟子の有無と年齢など)を総合考慮して、最終的には婚姻関係が破たんし回復の見込みがないと判断される場合には、離婚原因が認められることになります(民法770条1項5号)。

Q 相手方と離婚の話し合いをしようと思いますが、相手方は感情的になって、前向きな話し合いができません。離婚の交渉の段階で、弁護士をつけるメリットはありますか。
A 離婚の交渉の段階で弁護士をつけるメリットは、弁護士から法的なアドバイスをもらえること、弁護士が相手方との交渉の窓口となるため、相手方と直接話をするストレスから解放されることなどがあります。 当事務所に来られる依頼者の方々からも、ご依頼いただいた時点で、「相手方と直接やりとりをしなくてすみ、気持ちが楽になった。」とのお声を頂くことが多いです。
Q 私たちは、離婚の話し合いを続けてきましたが、相手方は絶対に離婚には応じないと言っています。離婚の手続をすすめるためには、これからどうしたらよいでしょうか。

A 当事者間で離婚の話し合いがつかない場合、離婚の手続としては、調停前置主義といって、いきなり裁判をするのではなく、まずは調停を申し立て、そこで離婚について話し合いをすることから始めることとされています(家事事件手続法257条1項)。すなわち、家庭裁判所に離婚の調停を申立て、そこで中立の第三者(調停委員2名と裁判官1名から構成される調停委員会)に間に入ってもらい、具体的な離婚理由などを相手方に伝えてもらうことになります。

なお、調停でも相手方が離婚に合意しない場合は、離婚の調停は不成立で終わることになりますが、そのあと離婚の裁判を起こすかどうするか、別途検討することになります。

Q 私と妻は離婚について合意し、合意した内容について公正証書を作ることになりました。離婚の公正証書の作り方について教えてください。

A まず、公正証書の内容となる離婚条件を明確に定めておく必要があります。離婚条件としては、財産分与、慰謝料、年金分割、お子さんがいる場合は、親権、養育費、面会交流などが問題となります。これらについて双方で合意できた場合は、公証役場に離婚公正証書作成の申し込みをします。
この場合、事前に、公正証書の土台となる離婚の協議書案を書面で確定させておいたほうが安心です。互いに意思の齟齬がないかを確認するとともに、内容が有効か、漏れ落ち・不利益な点がないかなどを確認しておくためです。できればこの段階で弁護士など法律の専門家に相談されることをお勧めします。内容を確定した後は、公証人役場に予約を入れ、夫婦二人で公証役場で離婚の公正証書を作成します。直接顔を合わせたくないときは、代理人が出頭することも可能です。

有責配偶者からの離婚請求

Q 夫は不貞の末、家を出て行ってしまいました。夫は家族のもとに戻る気はなく、私に離婚の請求をしてきました。私は離婚をする気持ちはありません。夫の離婚請求は認められてしまうのでしょうか。
A 自分で婚姻破綻を招いた者を有責配偶者といい、有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。しかし、一定の要件(別居期間が長期間に及ぶこと、未成熟の子が存在しないこと、相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと)を条件に有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります(最大判昭62.9.1 民集41巻6号1423号)。離婚が認められるまでに、長期間の別居期間が必要とされ、また、その間、有責配偶者が相応の生活費を相手方に支払ってきたか、離婚にあたり相応の離婚給付を提供しているか、など、離婚に至るまでの誠意も判断材料にされます。

不貞

Q 不貞の証拠
 夫が浮気をしているようです。急に残業や休日出勤が増え、家でもスマホを手放さず、外見も気にするようになりました。不貞を理由に夫に慰謝料を請求しようと思いますが、不貞の証拠としては、どのようなものがあればよいでしょうか。

A 不貞とは、夫婦の一方が夫婦以外の第三者と性的関係又は性交渉をもつことと言われています。
不貞の証拠としては、興信所による調査報告書、不貞の様子を撮影した動画や写真、性的関係を推測させる記載のあるLINE・メール・手紙、不貞を認めた誓約書や録音等、ホテルや旅行に行った際の領収書が考えられます。
最近は、LINEやメールのやり取りやSNSの投稿などを不貞の証拠としてあげる方が多いですが、表現が曖昧だと、言い逃れされる可能性もあります。LINEやメールは、内容、頻度、時間帯などから総合的に判断する必要があります。

Q 配偶者の不貞を理由に、離婚をすることを考えています。離婚の慰謝料としていくら請求できるでしょうか。
A 離婚自体の慰謝料については、離婚に至る一切の原因が考慮され判断されます。具体的には不貞の程度・回数・期間、婚姻期間や別居期間等のほかに、現実的な支払能力も考慮され、明確な算定基準といえるものはありません。裁判で認められる額は、高い例では500万円以上のものもありますがこれは特別な例で、数十万円から300万円位のものが多いといわれています。
Q 配偶者の不貞の証拠として性的関係までは証明できないような場合には(例えばキスをする、肩を抱いて歩く、デートなど)、慰謝料請求をすることはできないでしょうか。

A 民法770条1項5号に該当するような不貞類似行為がある場合は、場合によっては慰謝料請求の原因となりうることもあります。
詳しくはご相談ください。

Q 配偶者と別居して2年経ちますが、配偶者が異性と交際していることが判明しました。夫に慰謝料を請求できますか。

A 婚姻がすでに配偶者の不貞以前に破綻しており、不貞と婚姻関係破綻との間に因果関係がない場合は、慰謝料請求は認められないとされています(最判平8・3・26民集50巻4号993頁)。
ただ、いかなる場合に婚姻関係が破綻しているといえるか、判例は明確な基準を立てているわけではありません。離婚調停中であったり離婚を前提に双方合意の上での別居後は、婚姻関係の破綻が認められやすいとされています。他方で、家庭内別居のような場合や一方が勝手に家を出て別居してしまったような場合は、事案ごとに検討する必要があります。

不貞の相手方への慰謝料請求

Q 夫が会社の同僚と浮気をしています。夫の浮気の相手の女性に対し慰謝料を請求することはできますか?

A 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)として認められる可能性があります。
慰謝料額としては、数十万円から200万円くらいが多いようです。
なお、慰謝料請求をされる場合、消滅時効には注意が必要です(民法724条)。

性交渉拒否

Q 配偶者の性交渉の拒否を理由に、慰謝料を請求することはできますか。

A 婚姻関係においては性生活が重要な要素とされ、正当な理由なく性交渉を拒否した場合、慰謝料が認められる可能性があります。ただし、性交渉を拒否したか否か、性交渉の拒否に正当な理由があるか否かは、立証が難しいケースも少なくありません。なお、婚姻当初から性交渉を拒否し続けた妻に対して慰謝料150万円を認めた裁判例があります(岡山地津山支判平成3・3・29 判時1410号100頁)。

財産分与

Q 財産分与の対象になるのはどのようなものですか。

A 財産分与には、清算的財産分与、慰謝料的財産分与、扶養的財産分与があるとされていますが、中心になるのは清算的財産分与です(民法762条)。
婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を清算することを清算的財産分与といいます。以下では清算的財産分与を念頭において解説します。
財産分与の対象としては、一般的には預金や不動産が思い浮かぶと思いますが、それ以外にも、自動車、有価証券、保険金、年金、財形、社内預金、退職金などがあります。

Q 財産分与をする場合、いつの時点の財産を分与することになるのでしょうか。
A 財産分与で清算の対象となるのは、夫婦が協力して形成した財産なので、原則として夫婦の協力関係が終了する別居時を基準とするのが、現在の実務です。ただし、次条によっては、別居前や別居後の財産も対象とされる場合もあります。詳しくはご相談ください。
Q 財産分与はどのような清算割合で分けることになりますか。専業主婦の場合や、共働きの場合で違いはありますか。
A 財産分与の清算割合が話し合いで決まらない場合は、一方が専業主婦か、共働きかに関わらず、実務では原則2分の1で分けるとされています。ただし、配偶者の一方の特別の努力や才能によって資産形成がなされた場合には、清算割合が修正される場合もあります。双方が芸術家として活動するとともに、妻が約18年間専ら家事労働にも従事してきたことなどを考慮して、妻の寄与割合を6割とした裁判例があります(東京家審平成6・5・31 家月47巻5号52頁)。
Q 将来受け取る退職金も財産分与の対象になりますか。

A 退職金も財産分与の対象になります。退職までにある程度年数があっても、以下のような計算方法で、金額が算定されることが多いです。
基準時(離婚または別居時)において自己都合退職した場合の支給金額×(同居期間/基準時までの在職期間)

Q 私が親から相続した財産も、財産分与の対象になるのでしょうか。

A 相続によって得た財産は、他方の協力によらずに得た財産ですから、特有財産といって、財産分与の対象になりません。特有財産には、ほかに婚姻前から有する財産などがあります。ただし、特有財産であることを主張する場合は、相手方がそれを認めない場合、特有財産であることを証明していかなければならないことに注意が必要です。特有財産を主張できるかどうかは、証拠などから判断していく必要があり、法的な判断が求められますので、弁護士にご相談されるとよいと思います。

親権

Q 私と妻は離婚には合意していますが、二人とも子どもの親権を主張し譲りません。親権者はどうやって決めればよいでしょうか。

A 親権者とは、未成年の子どもの財産を管理したり、法的な問題で子どもの代理人になったり、子どもの監護・養育をする人をいいます。
親権と切り離して、監護者(監護・養育をする人)を決める場合もあります。
父親と母親がいずれも親権を譲らず、話し合いで解決できない場合、家庭裁判所が最終的に判断します(民法819条1項2項)。親権者を決定する基準としては、監護能力、監護態勢、監護実績のほかに、子の状況、子の意思、父母及び親族との情緒的結びつき、暴力虐待の存否、監護開始の違法性の有無、面会交流の許容性など、総合的に考慮して判断されます。
子どもが15歳以上の場合、家庭裁判所は、親権者・監護権者の指定の審判などでは、子の陳述を聴取します(人訴32条4項)。

Q 離婚時に、相手を親権者として離婚しましたが、離婚後、相手が子どもをきちんと育てているか心配です。親権者を私に変更することはできますか。

A 親権者をいったん決めた後、離婚後に変更するには、家庭裁判所で合意または親権者変更の審判を得る必要があります(民法819条6項)。親権者と非親権者との間で、親権者の変更について合意があれば別ですが、そうでない場合は、親権者による虐待行為など明らかに子の福祉に反する事情がなければ、審判等で親権者の変更が認められるのは一般的には難しいのが実情です。

養育費

Q 子どもの養育費はどうやって取り決めればよいでしょうか。

A 未成熟の子がいる場合、養育費を取り決めることは親としての責任でもあります。当事者間で養育費の内容について合意できない場合は、家庭裁判所の離婚調停や離婚訴訟の中で請求したり、離婚後に養育費の調停を申し立てることができます(民法766条1項、2項)。
養育費の金額の目安として参考になるのは、令和元年12月23日に公表された「改定標準算定表(令和元年版)」です。義務者(養育費の支払義務を負う者)と権利者(養育費の支払いを請求する者)の各収入、子の数・年齢に応じて算定されており、広く裁判所の実務で採用されています。養育費について、裁判所外の協議で取り決める場合にも、支払は長期に渡ることが多いので、強制執行が可能な公正証書を作成しておくことが考えられます。

Q 養育費をいったん取り決めた後に減額や増額をすることは可能ですか。

A 当事者間の合意があれば、減額も増額もできますが、相手が合意しない場合は、養育費減額ないし増額の調停を申し立てることになります。
養育費減額の例としては、義務者の収入の減少や失業・病気や事故により長期入院、義務者が再婚して新たに子をもうけたこと、権利者の再婚相手と子が養子縁組したこと、などがあります。

養育費増額の例としては、義務者の収入の増額、子の教育費が従前より多額となったこと、などがあります。

ただし、減額や増額の事由があっても、常に認められるとは限りませんので、見通しなどについては、ぜひご相談ください。

Q 養育費が止まってしまいました。どうしたらよいでしょう。

A 家裁の調停、審判、判決、和解によって、養育費を定めたときは、履行勧告(相手方に対して、決めたことを守るように裁判所が勧告する制度)や履行命令(相手方に対して、履行を命令し、命令に従わないときは、10万円以下の過料の支払いが命じられる場合があるとする制度)を利用することができます(家事事件手続法289条、290条)。
ただし、いずれも養育費を強制的に支払わせるものではありません。
養育費を強制的に取り立てるためには、強制執行をすることが考えられます。
強制執行について定めた民事執行法という法律がありますが,2019年5月10日に改正されています(2020年4月から施行)。
これによって、裁判所を通して相手方の預金口座や勤務先を調べることも可能となり、養育費の差し押さえもしやすくなりました。
養育費の不払いがあるような場合もあきらめず、まずは弁護士にご相談ください。

面会交流

Q 妻子とは離婚を前提に別居しています。子どもに会いたいのですが、別居中でも面会交流を求めることはできますか。

A 面会交流とは、非親権者や非監護親が子どもと会ったり、手紙や電話などで交流することをいいます。別居中でも面会交流を求めることはできます。面会交流の方法・頻度などについては、子どもの福祉を第一に、可能な限り父母間の話し合いで取り決める必要があります。話し合いで決められない場合には、家庭裁判所の調停で協議することができ、調停でもまとまらない場合は、家庭裁判所の審判で、裁判官に判断してもらうことができます(民法766条1項、2項)。

DV

Q DVには、どのような形態がありますか。

A DVの態様として、以下のような例があります。

身体的暴力:殴る、蹴る、髪を引っ張る、首を絞める、刃物で刺す、物を投げつける
精神的暴力:人格を否定するような暴言を吐く、無視を続ける、メールや行動を規制する、気に入らないと、壁をげんこつで打つ、子どもに「ママ(パパ)はバカだから、いうことを聞かなくていい」と話す
性的暴力:性行為の強要、避妊に協力しない、無理やりアダルトビデオを見せる
経済的暴力:生活費を渡さない、浪費を繰り返す

DVというと、身体的暴力を思い浮かべ、精神的暴力などはDVに当たらないと考えている人もいます。しかし、実際に弁護士に相談にこられるDV被害の多くは精神的暴力です。精神的暴力による被害も被害者の心身をむしばみ、被害が重大となることが少なくありません。
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)の定義でも、身体的暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動もDVとしています。

Q 私は夫のDVで避難し、夫には住所を秘匿しています。夫に住所を秘匿したままで調停の申立をすることができますか。

A 調停の申立書は相手方に送付されます。したがって、申立書に記載するご自身の住所は相手方に知られてもよい住所(たとえば同居中の住所や実家など)を記載して下さい。その場合、連絡先の届出書という書面に、現住所を記載し、非開示の希望に関する申出書をつけて出すという方法があります。同様に、委任状にも現住所を記載しないでください。
しかし、これも100%確実とはいえないので、たとえば住所など絶対に開示したくないときは、調停の申立の書面には一切記載せず、たとえば代理人をたて、連絡先を代理人の住所とすることもあります。
なお、相手方に住所を秘匿したいとか、相手方の住所が不明、調停の申立書の記載方法がわからないなど、調停の申し立て全般についてご質問などがある場合、当事務所にご相談ください。

保護命令

Q 私は配偶者から暴力を受けています。相談機関から保護命令の申し立てを検討するように言われましたが、保護命令とは何でしょうか。

A 保護命令とは、加害者からの身体的暴力や生命等に対する脅迫を受けた場合これを防ぐため、被害者の申立てにより、加害者に対し、被害者に近寄らないことなどを裁判所が命じる決定のことです。

保護命令の種類には以下のようなものがあります(DV防止法10条)。

接近禁止命令
    • 加害者に対し、被害者等の身辺のつきまといや、勤務先の付近をはいかいすることを6ヶ月間禁止することを命じます(DV防止法10条1項1号)。
    • 被害者に対する電話やファックス、メール等を禁止する制度もあります(DV防止法10条2項)。
    • 被害者本人のほか、被害者の未成年の子どもや、被害者と密接な関係のある親族等も対象とすることができます(DV防止法10条3~5項)。
退去命令
    • 加害者に対し、被害者と共に生活の本拠としている住居から2カ月間退去すること及び当該住居の付近をはいかいしないことを命じます(DV防止法10条1項2号)。
Q 保護命令を申立てた場合の手続の流れについて教えてください。

A 東京地裁の一般的な流れには以下となります。

裁判所に保護命令の申立て

裁判所は即日または数日内に申立人(または代理人)と面接(審尋)

その約1週間後に相手方の意見聴取のため審尋

保護命令発令

警視総監又は道府県警察本部長に対し保護命令発令について通知。
配暴センターに通知

Q 保護命令に違反した場合はどうなりますか。
A 保護命令の期間中に加害者が命令違反を犯した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます(DV防止法29条)。
Q 夫からモラル・ハラスメントを受けており、離婚を考えています。モラル・ハラスメントは離婚理由になりますか。

A モラル・ハラスメントとは、一般的に言葉や態度等によって行われる精神的な暴力・嫌がらせのことをいい、日常的に繰り返し行われることで、相手方の精神状態を次第に不安定なものにします。
モラル・ハラスメントによって婚姻関係が破綻し回復の見込みのないと判断される場合は、民法770条1項5号「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚原因になります。
モラル・ハラスメントという場合、事実関係(いつどこで誰が何をどうした)やその証明手段が重要になってきますので、詳細については当事務所にご相談ください。

年金分割

Q 離婚にともない、年金分割を請求できると聞きました。年金分割とはどのようなものですか。

A 年金分割には合意分割と当然分割があります。

合意分割

平成19年4月1日以降に離婚をした夫婦は、合意また裁判所の決定により年金を分割することができます。分割の対象は、被用者年金(厚生年金と共済年金の報酬比例部分いわゆる二階建て部分)です。合意の上限は50%です。
分割割合について2人の意見がまとまらないときは、家裁の調停で取り決めたり、審判(離婚後の場合)、判決(離婚訴訟で請求する場合)で裁判官に決めてもらうことができます。特別な事情がない限り、審判や判決でも、分割割合は2分の1と判断されています。

当然分割(3号分割)

平成20年4月1日の離婚には、平成20年4月1日以降の婚姻期間で3号被保険者であった期間について、報酬比例部分につき、当然分割(50%)が行われます。
なお、年金分割は、実際に支払われる年金額を分割するのではない点に注意をしてください。保険料納付記録(標準報酬)を分割することになるため、離婚後に配偶者が死亡しても、自分の年金として受領することができます。

Q 年金分割を請求するためには何を準備したらよいでしょうか。

A 年金事務所で離婚時年金分割の情報通知書を取得してください。50歳以上の方は、離婚する前の年金の見込み額と、離婚により年金分割をした場合の年金の見込み額を記載した書面も受け取ることができます。

年金分割を請求できる期間は原則離婚時から2年間ですので、注意が必要です。一般的には、離婚と同時に年金分割についても定めておくことをお勧めします。

法律相談申込み・お問合せ

相続の基本

相続人

Q 「相続人」になれるのは誰?

A 以下の者が「相続人」になれます。

(1)配偶者(民890条)
(2)子
被相続人の子は、第一順位の法定血族相続人で(民887条1項)、子が複数いるときは、同順位となります。
もし、被相続人の子が被相続人の死亡以前に死亡したり、民法891条や廃除によって相続権を失った場合は、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人となります(民887条2項)。
(3)親、きょうだい
被相続人の子、孫、ひ孫がいない場合には、被相続人の尊属(実親、養親)が第2順位の法定相続人となります(民889条1項1号)。
尊属がいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が第3順位となります(民889条1項2号)。もし、被相続人の兄弟姉妹が被相続人の死亡以前に死亡したり、民法891条や廃除によって相続権を失った場合は、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人となります(民889条2項)。
(4)受遺者
例えば、遺言書に「Aさんに遺産の10分の1を遺贈する」と書いてあったような場合、このAさんも相続人となります(民990条)。

Q 夫が亡くなりましたが、私のお腹には夫の子がいます。胎児も相続人になれるでしょうか?

A なれます。「私権の享有は、出生に始まる」とされていますが(民3条1項)、その例外として、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と定められているからです(民886条1項)。ただし、死産となった場合は、はじめから存在しなかったこととされ、相続人とはなりません(民886条2項)。
胎児の相続登記も可能ですが(死産となった場合は、抹消登記手続きをすることになります)、出生前の遺産分割協議はできないとされています。

Q 夫と夫の両親が、事故で亡くなりました。このように、死亡の先後がはっきりしない場合はどう考えたらいいでしょう?

A 親子が一緒に事故に巻き込まれて死亡した場合、民法では、「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は同時に死亡したものと推定する」とされています(民32条の2)。したがって、相互に相続が発生しないという扱いとなります。
また、大規模災害、自殺、孤独死等、死亡日時がはっきりしないような場合にも、同様の問題が生じることがありますが、上記と同じように考えてよいでしょう。

Q 兄が、父を脅迫して遺言書を書かせ、その後父は亡くなりました。このような非行をした兄も父の相続人となるのでしょうか?

A 相続権不存在確認訴訟等で相続欠格(相続人となれない)と判断される場合がありますが(民891条)、実際には立証は難しいことが多いと思われます。
なお、欠格事由があるとされれば、法律上当然に相続資格を失いますが、欠格者に子がいる場合、その子は代襲相続人となります。

Q 私は、息子からひどい虐待を受けています。息子には私の財産を相続させたくないのですが、どうしたらいいでしょう?

A 被相続人に対する虐待・侮辱があるような場合は、被相続人は遺言で廃除の意思表示を行ったり、生前に家庭裁判所で廃除を認める審判を求めることにより、相続人から除外することができます(民892条、893条)。

廃除された者は、被相続人の死亡のときに遡って、相続人から除外されます。遺留分も請求できません。ただし、廃除された者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人になれるため、孫がいる場合には、被相続人の意図を十分に反映できないことがあります。

廃除の対象は、遺留分を有する相続人に限られていますが、これは、遺留分を有しない相続人を相続から除外したい場合には、被相続人が遺言を作成すれば済むためです。また、養子や配偶者に相続させたくない場合は、廃除ではなく、離縁や離婚といった手段を用いることが通常で、実際には、廃除の対象は実子が多いと思われます。

相続分(割合)

Q 父が、遺言書を作らないまま亡くなりました。私が相続できる財産の割合は、どの程度でしょう?

A 遺言がない場合には、法定相続人が、民法で定められた割合で遺産を相続することになります(民900条)。
具体的には、以下のとおりとなります。

① 配偶者と子が相続人
配偶者と子の相続分はそれぞれ2分の1となります(民900条1号)。例えば、妻と子2人が相続人である場合、妻の相続分は2分の1、子の相続分は各4分の1になります。
② 配偶者と直系尊属が相続人
配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1となります(民900条2号)。例えば、妻と、亡夫の両親が相続人である場合、妻の相続分は3分の2、夫の両親の相続分は各6分の1になります。
③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人
配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となります(民法900条3号)。例えば、妻と、亡夫の2人の兄が相続人である場合、妻の相続分は4分の3、兄の相続分は各8分の1になります。
④ 相続人である子、直系尊属、兄弟姉妹が数人いる場合
原則として、各自の相続分は等しいとして、按分することになります。実子と養子との間で取得分に違いはありません。
⑤ 代襲相続人が複数いる場合
被代襲者の相続分を按分することになります。

Q 父が、遺言書を作っていた場合、私が相続できる財産の割合は影響を受けるのでしょうか?

A 遺言があれば、原則として、その遺言で指定された者が指定された内容(相続分の指定、遺産分割方法の指定等)で遺産を取得することとなります。したがって、この場合、法定相続分で取得することにはなりません。

 なお、遺言による遺産の取得について、一定の制限を加える制度としては、遺留分の制度があります。

Q 父は、1979年に死亡しました。その後、何も手続きをしないまま放置していましたが、相続人各自の法定相続分は、今と同じように考えていいでしょうか。

A 1980年以前の相続の場合、配偶者の相続分が異なりますので注意が必要です。

配偶者と子の場合 配偶者3分の1、子3分の2
配偶者と直系尊属の場合 配偶者2分の1、直系尊属2分の1
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者3分の2、兄弟姉妹3分の1

となります。

Q 亡父には婚外子がいました。法定相続分は、私と同じとなるのでしょうか。

A 同じです。

婚外子(婚姻していない男女間に生まれた子)については、従前は、婚内子の相続分の2分の1とする旨民法上定められていました(民法900条4号但書の従前規定)。しかし、最高裁大法廷の平成25年9月4日決定で、この規定は憲法14条1項(法の下の平等)に違反して無効となると判断されたことを受け、削除されました。したがって、現在では、婚外子も婚内子と同じ相続分として遺産を取得することができます。

Q 私の相続分を、子どもに無償で譲渡することはできますか。

A 可能です。相続分の譲渡については、民法で認められています(民905条)。この場合、債権だけではなく、借金などの債務も移転させることになります。

 ただし、譲渡人が死亡した場合の相続に際して「贈与」(民法903条1項)として扱われる可能性があるので、詳しくは弁護士にご相談ください(最判平成30年10月19日参照)。

遺産の範囲

Q 父が亡くなりました。父の財産のうち、どこまでが遺産になるのでしょう?
被相続人が相続開始時に有していた財産的権利義務(遺産)は、被相続人の一身に専属するものを除いてすべて相続の対象となります(包括承継。民896条)。 不動産、預貯金、現金、株式、賃借権はもちろん、債務も相続財産になります。
Q 生命保険も相続財産に含まれますか?
A 生命保険は、受取人の指定がある場合には受取人の固有の財産として相続財産にはなりません。保険金の受取人が指定されていない場合は相続財産に含まれます。
Q 亡父は、知人の保証人となっていました。保証債務も相続財産に含まれますか?
A はい。原則として相続の対象になります。
Q 墓や仏壇も相続財産に含まれますか?

A 系譜や祭具、墓地などの所有権は、相続財産には含まれません(民897条)。「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべきもの」が承継することになります。

Q 亡父と同居していなかったので、遺産がよくわかりませんし、同居していた兄夫婦も全部を開示してくれません。どうしたらいいでしょう。
A ぜひ弁護士にご相談ください。
Q 最近、「配偶者居住権」という言葉を耳にするようになりました。どういうものでしょうか。

A 配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった後も、遺された配偶者が引き続き自宅に住み続けられる権利です。高齢化社会において、被相続人死亡の後にも配偶者の居住環境を確保する必要性が高くなってきていることに配慮して、民法(相続法)改正で新たに創設され、2020年4月1日から施行されています。

この権利が創設される前、法定相続分を考慮して相続の割合を決定すると、配偶者が自宅不動産(所有権)を相続した結果、取得できる他の財産がその分少なくなってしまうという問題がありました。そこで、自宅不動産の権利を所有権と利用権に分け、後者(配偶者居住権のみ)を配偶者が取得することで、住む場所を確保しつつ、その他の財産も相続できるようになりました。

Q 配偶者居住権は、必ず認められるのですか?

A いいえ。配偶者居住権が認められるためには、

①配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していたこと

②その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、遺贈又は死因贈与がされたこと

が必要です(民1028条1項、同544条)。

なお、②について、遺言書や遺産分割協議書がなくても、共同相続人間で配偶者に配偶者居住権を取得させることについて合意が成立しているときや、配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権取得の希望を申し出た場合に、遺産分割の審判により、配偶者に配偶者居住権が与えられることがあります(民法1029条)。

Q 私の配偶者居住権は、子どもの1人に譲ることもできるのでしょうか?
A いいえ。配偶者は、配偶者居住権を譲渡できず(民法1032条2項)、配偶者死亡の際には、その者の相続財産とはならないとされています(民法1036条、同597条3項)。
Q 「配偶者短期居住権」は、「配偶者居住権」とどこが違うのでしょうか。

A 配偶者短期居住権は、配偶者居住権と同様に民法(相続法)改正で創設された権利です。

①居住建物が被相続人の財産に属したこと

②居住建物を無償で使用していたこと

③居住建物に居住していたこと

を条件に、一定の期間、建物に居住できる権利が認められています。

配偶者居住権が終身またはある程度の長い期間を想定しているのと異なり、配偶者短期居住権は、存続期間が比較的短期に限定されています。また、配偶者居住権が、配偶者の相続分として取得することとされるのに対して、配偶者短期居住権は、相続分に算入されません。配偶者が相続を放棄した場合でも配偶者短期居住権は成立するものと解されています。

Q 「配偶者短期居住権」の「短期」は、どの程度の期間でしょうか。

A ①配偶者が居住建物について遺産共有持分を有している場合と、②有していない場合で異なります。

①の場合、原則として、相続開始時から居住建物について遺産分割が終了した時までとされています(民法1037条1項1号)。なお、早期に遺産分割協議が成立した場合でも、配偶者が転居するために必要な猶予期間として少なくとも相続開始の時から6か月間は配偶者短期居住権が存続するものとされています。

②の場合、相続開始の時を始期、居住建物取得者による配偶者短期居住権の消滅申入れの日から6か月を経過する日を終期として存続するものとされています(民法1037条1項2号)。

相続放棄

Q 父が亡くなりました。まず考えるべきことは何でしょう?

A 相続があったことを知ったとき、相続人は、「単純承認」、「相続放棄」、「限定承認」のどれかを選ぶことになります。

「単純承認」とは、相続人が被相続人の財産をすべてそのまま受け継ぐものです。

「相続放棄」とは、相続人が被相続人の財産を全く受け継がないものです。

「限定承認」とは、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐというものです。

何もしなければ「単純承認」ということになります。相続人が「相続放棄」や「限定承認」をするためには、家庭裁判所に申立てをする必要があります。この手続きは、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に行う必要があります。

Q 相続放棄とは、どのような制度ですか

A 被相続人に多額の負債がある場合、負債も相続人の相続財産になります。何も手続きしないと多額の負債を相続してしまうことがあるため、それを免れる方法として、相続放棄という制度が設けられています(似た言葉ですが、「相続分の放棄」とは違います。「相続分の放棄」は、遺産に対する共有持分権を放棄する意思表示をいいます)。

相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。家庭裁判所で相続放棄が受理されると、はじめから相続人でなかったものとみなされます。3か月間では財産調査が間に合わず、相続放棄の判断ができない場合には、家庭裁判所に対して、「伸長の審判申立」をすることが可能です。

実務上、この3か月の熟慮期間の起算点が問題となるケースが多く、裁判例の集積もあります。弁護士にご相談ください。

Q 相続放棄と限定承認とは、どのような違いがあるのですか
A 限定承認は、プラス財産とマイナス財産を差し引き計算した結果、もしプラスが残れば、これを相続することができます。ただし、限定承認は、相続人全員でしなければなりません。

遺産分割協議

Q 遺産分割協議は、いつまでにする必要がありますか。

A 遺産分割は相続開始後であればいつでも可能です。
しかし、長期間放置しておくと、遺留分侵害額(減殺)請求権が消滅する、子や孫の代まで紛争を残す、相続財産を第三者に時効取得される、相続人の数が膨大になり、相続人全員を探して協議をしようとしても、その行方を探すだけでも大変な苦労を要する、といった問題があります。早めに協議を開始することが望ましいです。

Q 遺産分割協議は、法定相続分どおりにする必要があるのですか?

A いいえ。法定相続分どおりでなくても、全員が合意した内容や割合によって遺産を取得することが可能です。
なお、もし円満な話し合いができない場合には、弁護士に依頼して協議をしたり、家庭裁判所に調停を申し立てることが可能です。

Q どのような方法で分割すればいいのでしょう?

遺産分割の方法には3種類があります。「現物分割」「代償分割」「換価分割」です。

「現物分割」とは遺産を構成する財産自体を分割するものです。預貯金を分けたり、不動産を分けるという典型的な場合になります。

「代償分割」とは取り分が多くなる相続人が他の相続人に金銭を支払うことで調整する場合です。

「換価分割」とは遺産を売却して売却代金を相続人間で分かる場合です。

Q 遺産分割協議をしたいのですが、相続人の1人が行方不明です。どうすればいいでしょうか。

A まずは、戸籍謄本等から行方をさがしましょう。その上で、やはり行方が分からない場合には、不在者の従来の住所地の家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任を申し立てることになります。選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割・不動産の売却などを行います。
行方を探すのも、不在者財産管理人の選任を申し立てるのも個人では大変なことも多いと思いますので、弁護士に依頼することをお勧めします。

Q 兄は、亡父の生前、父の口座から1000万円を引き出して受け取っています。これは、遺産分割で考慮してもらえないのですか。

A 「特別受益」として考慮されることがあります。被相続人から生前に多額の現金をもらっている相続人がいるとすると、その事情を無視して相続分を決めることは不公平です。そこで民法はこのような不公平を調整する方法として、特別の利益を受けた者、いわゆる特別受益者に対して利益の持戻しを命じています。
ただし、全ての贈与が持戻しの対象になるわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。弁護士にご相談ください。
 ※質問の事例では、特別受益として遺産分割で考慮されるためには、①亡父の預貯金が引き出され、これが実際に兄の手に渡っていること、②それが亡父の兄に対する生計の資本としての贈与の意思に基づくことを主張立証する必要があります。

Q 私は、寝たきりの同居の母を介護するために仕事を辞め、母が亡くなるまで、5年間にわたって介護してきました。遺産分割にあたって、その分を考慮してもらうことはできますか。

A 寄与分として認められる可能性があります。
寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいる場合、公平を図るために、増加させた相続人に相続分以上の財産を取得させる制度のことをいいます。
具体的には、被相続人の家業に従事して被相続人の財産を増やした、寝たきりの親を自宅介護して財産の減少を防いだような場合です。なお寄与分を主張できるのは相続人だけです。ただ、一般に、金額の算定が困難なこともあって、寄与分の主張は認められにくいという現状があります。

Q 私は、夫が亡くなった後も義母と同居し、病気の義母を長年介護してきました。義母が亡くなりましたが、私は、亡夫の兄弟に、何も請求することはできないのでしょうか。

A 相続税法改正により創設された「特別寄与料制度」(2019年7月から施行)によって、寄与料を請求できる可能性があります。これは、被相続人の療養看護などを「相続人以外の親族」が無償で行った場合に、その親族が相続人に対して金銭の請求をできる制度です。「相続人以外の親族」とは「6親等内の血族と3親等内の姻族」を指します。

Q 2017年5月から法定相続情報証明制度が導入されたそうですが、これはどのような制度ですか?

A 相続が生じた場合、相続人は、不動産登記の変更、預貯金の解約・払戻し、生命保険金の受取りなど、様々な手続きをすることになります。そして、各手続きを行うにあたり、原則として、各所(法務局、金融機関、生命保険会社など)にそれぞれ、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を提出する必要があります。戸籍謄本の原本は還付してもらうことはできますが、それでも、還付を受けては別の機関に原本を提出する、ということを繰り返さないといけず、多くの手間を要します。

そこで、2017年5月、法定相続情報証明制度が導入されました。相続人が、収集した戸籍謄本をもとに法定相続情報一覧図を作成して法務局に提出すると、法務局は、相続人に、認証文の付いた法定相続情報一覧図の写しを交付してくれます。この法定相続情報一覧図は、5年間法務局に保存されます。この法定相続情報一覧図が戸籍謄本の代わりとなるので、相続人は、これを使って各種相続手続を行うことができます。

ただ、この制度によっても、相続人としては、一度は戸籍謄本を収集しなければなりません。また、導入されて日が浅いため、この制度がどれだけ普及・浸透しているかはわかりません。念のため、提出先に、戸籍謄本等の提出を要するか、法定相続情報一覧図で足りるかを確認してから動いた方がよいと思われます。

遺言書

Q 遺言書には、どのような種類がありますか。

A 自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などがあります。

自筆証書遺言は、自ら自署して作成する遺言です。

公正証書遺言は、公証人によって作られる遺言です。

秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公正証書遺言と同様の手続きで作成する遺言です。

Q 自筆証書遺言は、自由に作成していいのでしょうか。

A いいえ。方式があります。
自筆証書遺言をする場合には、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書して、これに印を押さなければならないものとされています(民968条1項)。ただし、2018年7月の法改正(2019年1月13日施行)により、例外的に、自筆証書に相続財産の目録を添付するときは、その目録については自書しなくてもよいことになりました(同条2項。なお、目録を添付する場合には、遺言者は、目録の各頁に署名押印をしなければなりません)。
財産が多岐にわたる場合や、後々相続人間でもめることを回避したい場合には、弁護士への相談・依頼をお勧めします。

Q 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがお勧めですか

A それほど複雑でない相続関係であれば、「自筆証書遺言」でもいいでしょうが、有効性が問題になったり、紛失等の可能性もあるため、できれば「公正証書遺言」をお勧めします。

「公正証書遺言」は、遺言の内容を公証人(元裁判官や元検察官)が公正証書によって作成するものです。自分なりに遺言内容をまとめて公証役場に行けば、公証人が詳しい内容を作成してくれます。ただし証人を2名用意しなければなりませんし、高額ではありませんが、費用はかかります。

Q 遺言書を法務局が保管してくれるようになったと聞きましたが・・・

A はい。「法務局における遺言書の保管等に関する法律」によって、公的機関である法務局が遺言書を保管する制度、「遺言書保管制度」が創設され、2020年7月10日から施行されています。

自筆証書遺言は自宅で保管されていることが多く、紛失したり、相続人や関係者によって廃棄や改ざんがなされる危険があります。公的機関が保管することによって、これらの危険を回避するだけでなく、遺言書の存在の把握が容易になります。その結果、遺言者の最終意思を実現し、相続手続きを円滑に進めることになります。

住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局で保管をしてもらうことになります。法務局に保管されている遺言書については、通常要求される遺言書の検認(民法1004条1項)は不要です。
ただし、法務局では、保管する際に、遺言の内容についての審査・確認はしてくれないので、そこは要注意です。

Q 前の遺言内容を変更したいのですが、どうしたらいいでしょう。

A 遺言書はいつでも、何度でも作り直すことが可能です。
複数の遺言書が出てきた場合には、最新の年月日の遺言書が有効とされます。

Q 遺言執行者は必要ですか。

A 必ずしも必要はありませんが、遺産が複雑であったり紛糾が予想される場合には決めた方がいいでしょう。その場合には弁護士を選任することをお勧めします。
遺言書に定められていない場合には、利害関係人が家庭裁判所に選任申立をすることができます。

Q 亡母の相続人は兄と私の2人ですが、亡母の遺言書には、兄に遺産の全部を相続させると書いてありました。私は一切もらえないのでしょうか。

A 遺留分侵害額請求をすることで、遺留分相当額をもらうことは可能です。

遺留分とは、一定の相続人について保障されている最低限の取り分のことです(事例の「私」については、遺産全体の4分の1)。

被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与や遺贈をしたことで、相続人が遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、この相続人は、贈与や遺贈を受けた者に対し、遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます。

遺留分侵害額の請求について、当事者間での話合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停で協議をすることも可能です。

遺留分侵害額の請求をするには、遺留分に関する権利を行使する旨の意思表示を相手方にする必要があります。この意思表示をしないと、遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年又は相続開始の時から10年を経過したときに時効によって消滅します。

Q 遺留分は、相続開始前に放棄できますか。
A 家庭裁判所の許可を得れば可能です。相続開始後であれば、家庭裁判所の許可は不要です。

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信託/財産管理

家族信託

家族・親族間における財産の管理・処分や承継のためには、遺言や各種の後見手続だけではなく、民事信託の手続を用いたスキームもあります。

信託手続を用いることで、ご自身の判断で、目的を定めてご自身の財産に信託を設定し、将来の財産の管理や柔軟な処分を可能にしたり、ご自身やご家族が利益を受けられる継続的な仕組みを作りあげることができます。

また、遺言では、受遺者が亡くなった後の次の世代での財産の承継先を決めることはできませんが、信託では、最初の受益者が亡くなった後に財産を引き継ぐ人をあらかじめ定めておくことができます(後継ぎ遺贈型信託、受益者連続信託といいます)。
例えば、最初は妻が受益者となり、妻が亡くなった後は、子供が、子供の次は孫が受益者となると定めておくことができます。さらに、残った財産は慈善団体に寄付するといったことを定めておくこともできます。

当事務所では、このような信託手続に関するリーガルサービスもご提供します。

後見

後見開始の申立ての代理人となり手続をすすめる、任意後見契約を締結する、後見人の候補者となることなどができます。
成年後見制度とは?

認知証、知的障がい、精神障がいなどで判断能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者(成年後見人等)を選ぶことによって、本人を法律的に支援する制度です。

判断能力が不十分になってから → 法定後見制度

判断能力が不十分になる前に  → 任意後見制度

法定後見制度

家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為を行います。
法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の3つがあります。

法定後見制度の3類型
後見保佐補助
対象者判断能力が全くない人判断能力が著しく不十分な人判断能力が不十分な人
同意権・ 取消権法律行為全般
(取消権のみ)
民法第13条1項各号
所定の行為※1
申立の範囲内で家裁が定める
特定の法律行為
(申立の際に設定する)※2
代理権財産管理全般申立の範囲内で家裁が定める
特定の法律行為

※1重要な法律行為(民法第13条第1項)

①預貯金を払い戻すこと。②金銭を貸し付けること。③金銭を借りたり、保証人になること。④不動産などの重要な財産に関する権利を得たり失ったりする行為をすること。⑤民事訴訟の原告となって訴訟行為をすること。⑥贈与、和解、仲裁合意をすること。⑦相続を承認、放棄したり、遺産分割をすること。⑧贈与や遺贈を拒絶したり不利なそれらを受けること。⑨新築、改築、増築や大修繕をすること。⑩民法第602条の一定期間を超える賃貸借契約をすること。

※2特定の法律行為

例 預貯金の払い戻し、不動産の売却、介護契約締結など

法定後見の流れ
Q 申立てはどうやってするの?
本人の住所地を管轄する家庭裁判所にします。
Q 誰が申立てをすることができるの?

本人、配偶者、4親等内の親族などです。
その他に市町村長が申し立てることもできます。

Q 申立てに必要な書類は?
用紙は家庭裁判所で入手できます。裁判所のホームページから入手することもできます。
Q 法定後見開始の流れは?

家庭裁判所に申立て
    ↓  調査 鑑定
審判(後見を開始するかどうか、後見人を誰にするか)
    ↓
  成年後見登記
    ↓
   開 始

後見人の役割

財産管理・・・現金、預金、証券、不動産の管理等をする。
身上監護・・・介護サービスの利用契約や、施設への入所契約などを行う。

Q 専門職後見人の報酬はいくら位かかる?
本人の財産、後見人の仕事内容を考慮して家庭裁判所が決めます。
任意後見制度
本人の判断能力が十分なうちに、将来の判断能力の低下に備え、本人の希望にそって、後見人や援助してもらう内容を決めておく制度です。
任意後見の流れ
Q 任意後見はどうやってするの?

誰に後見人を頼むか、どのような援助を受けたいかを考えて、任意後見人になってくれる人と一緒に、公証役場に行き、任意後見契約の公正証書を作成します。

Q 何を決めておけばいいの?


 *後見人を誰に頼むか。
 *将来在宅での生活が難しくなった時に、どのような施設に入りたいか。
 *預金や不動産等、資産の管理をどこまで頼むか。
 *後見人の報酬をどうするか。

Q 任意後見開始の流れは?

任意後見契約
   ↓ 公正証書
成年後見登記
   ↓ 本人の判断能力の低下
家庭裁判所に申立て(任意後見監督人選任の申立て)
   ↓ 調査 鑑定
審判(任意後見監督人選任)
   ↓
任意後見登記
   ↓
  開 始

任意後見人の役割

任意後見契約によって決まります。

Q 介護行為や、買い物、炊事、掃除洗濯などを頼めますか?

任意後見契約で委任できる事務は、法律行為に限ります。
法律行為ではない介護行為や買い物、炊事、掃除洗濯などの事実行為は、準委任契約という別の契約を結んでおくとよいでしょう。

Q 任意後見監督人は何をするの?

任意後見人を監督します。

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医療事故・医療過誤事件

医療事故・医療過誤事件は、特に専門的な知識や経験を必要とする分野です。

当事務所では、お客様のご負担を考え、最初から医療機関側に損害賠償請求をするのではなく、カルテや文献、裁判例、協力医の意見等をもとに、まずは法的責任追及が可能か否かを丁寧に調査しております。
ただし、医療機関や医師の責任が明白であったり、医療機関側も責任を認めているような場合は、調査を経ずに示談交渉事件としてお受けすることもあります。

当事務所には20年以上の豊富な経験を有する弁護士が所属しております(九州山口医療問題研究会、医療問題弁護団に10年以上所属し、数多くの訴訟も手掛けております)。

ご自身やご家族が医療過誤・事故の被害に遭った方はもちろん、医療機関や医師の処置や説明に疑問を抱いておられる方も、ぜひ、お気軽にご相談ください。

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一般企業法務

 企業の活動において日常的に発生する様々な問題について、法的な知見を生かし、紛争の予防方法、発生した紛争の解決方法をご提案し、健全な企業の運営・発展のためのリーガルサービスをご提供します。

 ことに、近時は、ESG投資が拡大すると共に企業活動におけるESG関連のリスクも高まっています。また、国連サミットにてSDGsが採択され、日本企業にも、企業の規模を問わず、サプライチェーンも含めた人権尊重がより一層求められており、そのような観点からの法的な助言、ご提案も行います。

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倒産処理・債務整理

 多額の債務を負担し返済に苦しんでいる個人の方について、その方の状況に適した解決方法を助言します。また、代理人として、債権者と交渉し、過払金がある場合はその返還請求を行い、各種債務整理手続を行い、経済的な立ち直りを支援します。
 支払不能または債務超過により事業を続けることが困難な法人につき、事業再生のための助言を行います。また、代理人として、債権者と交渉し、各種法的手続の申立を行います。

刑事事件

 被疑者または被告人が不当な刑罰を受けることを避け、量刑を軽くすることを目指し、証拠収集・立証活動を行います。また、逮捕・勾留されている場合には、身体拘束を早期に解消できるよう活動いたします。
 そのほか、刑事告訴・刑事告発、被害者支援(刑事裁判の被害者参加、損害賠償命令)等もお受けいたします。

労働問題

労働事件

 労働者の方が、職場で受けたハラスメント被害や不当な解雇・雇止め、賃金未払等のトラブルについて、助言し、代理人として使用者との交渉や各種法的手続の申立等を行います。
 使用者側では、上記のような労働紛争の予防のための助言や各種書類の整備、代理人として紛争解決のための対応や労働組合との団体交渉を行います。

一般民事

一般民事事件

 上記取扱い事件の他、契約書の作成、各種裁判対応、交通事故、その他損害賠償請求・金銭請求、賃貸借契約、境界紛争、消費者被害などもお受けいたします。
 記載のない事件・お困りごとについても、弁護士にご相談ください。