死亡した養子との死後離縁の許可を求める事案において、申立てが生存養親又は養子の真意に基づくものである限り、原則としてこれを許可すべきであるが、離縁により養子の未成年の子が養親から扶養を受けられず生活に困窮することとなるなど、社会通念上容認し得ない事情がある場合には、これを許可すべきではないと解されるとした上で、当該事例においては、利害関係参加人の就労実績や相当多額の遺産を相続していることなどから、社会通念上容認し得ない事情があるということはできないとして、申立てを許可した事例

【大阪高決2021(令3)年3月30日 家庭の法と裁判42号66頁】

【事案の概要】
別紙のとおり
 原審(神戸家裁姫路支部令和2年11月16日)は、推定相続人廃除の手続の潜脱を目的とする恣意的なものだとして申立てを却下

【決定の概要】
 決定:原審判取消、離縁を許可
(理由)
 養子縁組は養親と養子の個人的関係を中核とするものであることなどからすれば、家庭裁判所は、死後離縁の申立てが生存養親又は養子の真意に基づくものである限り、原則としてこれを許可すべきであるが、離縁により養子の未成年の子が養親から扶養を受けられず生活に困窮することとなるなど、当該申立てについて社会通念上容認し得ない事情がある場合には、これを許可すべきではないと解される。
 本件申立ては、抗告人の真意に基づく者であると認められるから、社会通念上容認し得ない事情があるかにつき検討すると、以下の諸事情に鑑みれば社会通念上容認し得ない事情があるとはいえない。

  • 養子Cの養子縁組の目的は一族の財産や会社経営の承継だがCの死亡により目的は遂げられなくなった
  • 利害関係人Dは、既に就労実績があり、かつ多額の遺産も相続し、養子縁組を解消しAの代襲相続人の地位を失っても生活に困窮しない
  • AとDの関係は著しく悪化していて、Dは同族会社の代取も辞任している