離婚時厚生年金分割について、婚姻期間中の相手方の保険料納付に対する申立人の寄与を同等とみることが著しく不当である特段の事情を認めるのが相当であるとした原審判を取り消し、請求すべき按分割合を0,5と定めた事案
〔事案の概要〕
A(抗告人・原審申立人・妻)とB(相手方・原審相手方・夫)は、平成24年に婚姻したが、Bが平成28年に離婚訴訟を提起し、離婚判決が確定した。その後、AがBに対し、婚姻期間中の年金分割についての請求すべき按分割合を0,5と定めることを申し立てた。原審は、婚姻期間中の相手方の保険料納付に対する申立人の寄与を同等とみることが著しく不当である特段の事情を認めるのが相当であるとして、Aの申し立てを却下したので、Aが即時抗告をした。
〔東京高等裁判所2022(令4)年10月20日決定 家庭の法と裁判48号89頁〕
〔判決の概要〕
対象期間における保険料納付に対する夫婦の寄与の程度は、特段の事情のない限り、互いに同等と見るのが離婚時年金分割制度の趣旨に合致する。
一件記録によれば、確かに、遅くともAとBの夫婦関係が極めて険悪となった平成28年8月以降は、AがBのために行う家事は洗濯程度にとどまる一方で、Aが購入した物品や使用済みの空き容器等の不要物等が、自宅の居室内、階段、玄関、台所等の生活スペースに大量に置かれ、そのため、快適かつ衛生的な生活が困難な状態になっていたこと、Aは平成26年頃以降、上記の物品等を片付けようとするBに対し、乱暴な表現でこれを叱責したり詰問したりする内容の電子メールを送信したことがあったことが認められる。
しかしながら、Aは、大量の荷物を搬入して自宅に引っ越す形で、平成18年12月にBと同居を開始したこと、Bは、自宅内にAの大量の荷物等が放置されたままの状態にあることを認識し容認しながら、平成24年にAと婚姻する旨の届け出をしたこと、AとBは、平成24年から平成27年までの間については、Aの言動・行動が原因で夫婦間に深刻な不和が生じたとまでは認められないこと、Aは、婚姻期間中もおおむね就労し、Bとの比較で言えば少額であるものの収入をえており、これをA自身の食費、携帯電話代、医療費、保険料等に充てることにより、家計の費用の一部をふたんしてきたといえること、Aは○○に罹患しており、その他の疾病の治療のために要するものを含め、毎月相当額の医療費を支払っていることが認められる。
これらの事情を総合的に考慮すると、本件において、対象期間における保険料納付に対する夫婦の寄与の程度を同等と見るべきではないとする特段の事情があるとまでいうことはできない。
以上の次第で、Aの申立てについては、按分割合を0,5と定めるのが相当である。